がん患者さんの“まちなかのオアシス”に
国民の2人に1人ががんにかかる現在、がんを始めとして病気で悩んでいる方やそのご家族は少なくありません。各医療機関には外来診察や相談窓口を通じて、患者さんやご家族をサポートする機能が備えられていますが、病気や治療に対する情報提供が主体で、患者さんやご家族の不安や悩みに対して十分に対話をする余裕がないのが現状です。
日本では、欧米のように心のケアを行うカウンセリングが生活習慣の中に普及していないという事情もあり、今まで相談する場所がなかったと思われていた方もおられると思います。
病気になった時に誰に相談したいかという問いに対し、家族や友人を上回り、医療者、がん経験者と答えた方が7割を占め、より病気に身近な人との交流を望んでいるというアンケート結果もあります。
そこで私たちは、病院の外に出た、日常生活の場である“まちなか”で、通常の医療では満たされない部分を埋め合わせるサポートができないかと考え、下野新聞社のご協力をいただき「まちなかメディカルカフェ in 宇都宮」を2013年4月、宇都宮市オリオン通りの「下野新聞NEWS CAFE」に開設し、活動を行ってまいりました。その後、2018年11月より、「Café ink Blue」に活動拠点を移動しましたが、今現在も下野新聞社の後援を頂いております。
ここでは、病気を持たれた方やご家族がお茶を飲みながら、リラックスした雰囲気の中で、安心して自由に話ができ悩みを語り合う場所を提供し、医療者やがん経験者などとの対話を通じて、病気を持ちながらも笑顔で前向きに生きることができるように少しでもお手伝いをさせていただきたいと思っています。
この考え方は「がんであっても笑顔を取り戻し、人生を生き切ることができるように支援したい」と願う、順天堂大学医学部病理・腫瘍学教授の樋野興夫先生が提唱された「がん哲学外来・メディカルカフェ」を根源としています。
診療や診察はいたしませんが毎回、医師数名、看護師、医療ソーシャルワーカー、臨床心理士などの医療従事者や、教員、学生、市民ボランティアなどのスタッフが参加しています。
スタッフの中にはがん経験者もおり、相談に来られる方の必要性に応じた対応ができるように心がけています。月1回ではありますが、来てくださる方に寄り添いながら、このメディカルカフェが皆様にとってささやかな“まちなかのオアシス”となれば幸いです。